歯科と認知症
認知症の方への歯科治療
65歳以上の高齢者のうち認知症を発症している人は推計15%で、2012年時点で約462万人に上ることが厚生労働省研究班の調査で明らかになっております。
2025年に700万人を突破し65歳以上の5人に1人となる見通しと言われており、歯科医院に来院する認知症患者は今後ますます増え続けると思われます。
当院では認知症への理解を深め、円滑な歯科治療と適切な対応を心がけております。
認知症の方の治療では、口を開けることに協力していただくことが困難な場合や、コミュニケーションが不安定で、口に触れられることに抵抗があり、興奮して治療中に動いてしまう場合があります。
治療の際は、患者さんと視線を合わせ、会話をしながら進めることや、いきなり口を触らずに、どこを触るのか会話をしながら進めるなど、慎重に治療を行うことが大切です。
歯と脳の関係
残存歯が少ないと脳の働きに影響が出る
歯がある状態で物を噛むことは、脳に刺激を与えてくれることが分かっております。
それは、歯と歯を噛み合わせたときの刺激が、歯根にある歯根膜から脳に伝わり、その刺激が脳を活性化させるためです。
歯がなくなることで、脳が刺激されにくくなり、脳の働きに影響を与えてしまうということが分かってきております。
「残存歯が少ない方」は「歯が多く残っている方」に比べて認知症リスクが高いと言われています。
噛むことの必要性
歯がある方でも意識して噛む(咀嚼)することは大切です。
食事を意識して噛んで食べていないと、脳への刺激が少なくなり、記憶や学習能力に関わる海馬の細胞数が少なくなり、感覚、運動、思考などの機能を司っている脳の働きが低下する恐れがあります。
また、入れ歯をしている方でも、ご自身に合ったもので噛むことで、脳への刺激を与える効果は期待できます。
歯科の認知症予防
歯科医院として、どのような方でも「物をしっかりと噛めるようにする」このことが認知症予防に繋がるため、診療の際に気づいたことがあればご案内いたします。
噛み合わせを改善することで、正しく噛むことができるようになります。
この治療により、認知症の方の記憶力が回復した事例もあります。
認知症予防として、歯がない方には「入れ歯」や「インプラント」という選択肢があります。
しっかりと物を噛めるようにすることをお勧めいたします。
入れ歯の特徴
- ◆メリット
- ・保険適応で安く入れ歯にできる。
・治療によるリスクがほとんどない。
・メンテナンスが簡単である。
・様々な性能の入れ歯がある。
- ◆デメリット
- ・慣れるまで、異物感を感じる。
・安い物はフィット感が劣ることがあり、外れたり痛みが出る場合もある。
・インプラントに比べると咀嚼力に欠ける。
インプラントの特徴
- ◆メリット
- ・自分の歯に近い感覚で噛める。
・審美性が良い。
・使用時の異物感がない。
・安定して外れる心配がない。
- ◆デメリット
- ・顎の骨の状態によって、作れない場合がある。
・自費治療のため、金銭的な負担が大きい。
・定期的なメンテナンスが必須である。
※インプラントを希望される患者さんに関しては、専門医を紹介いたします。